五感を心地良く刺激する、おいしいデートを企画しよう。
女性はたいてい、食に対して貪欲です。
私の場合でいえば、食事は自炊を基本としておりますが、そうしたほうが経済的だからというだけでなく、「おいしい・ヘルシー・栄養豊富」という3大要素をいっぺんに叶えて満足・納得したい、という欲張りな理由があるのです。
時にはお金もヘルシーも栄養バランスも無視して、ただひたすらおいしいものを食べたくなることもあります。
ちょっと街に出れば和・洋・中・エスニック料理と、多種多様の飲食店があり、バラエティ豊かな食の世界が広がっていますから、「今日のランチはタイカレー、ディナーはイタリアンで、明日は懐石弁当なんかいいかもね」という具合に、あちこちの店で食事をしたくなっちゃうのです。
しかし私のようにシングルライフの女性は、コンビニやファミレスやファストフード店ならいざ知らず、それなりの店へはひとりでは入りにくいことが多いので、「やっぱ自分で料理しよー」という結末になりがちです。
だからこそ、恋人がいろいろな店へ食事に連れて行ってくれると、すごくうれしいのです。
私にかぎらず女性はみな、食事に誘われて喜ばないなんてことはないでしょう。
自分では作れないような特別な料理、作れるとしても手間がかかって大変な料理は、ことのほか喜ばれると思います。
心地良くしつらえられた空間で、味も香りも見た目もよい料理を楽しめるよう、おいしいデートを企画してください。

ビジネス接待なら料亭でしょうが、彼女を連れて行くなら和食専門店へ。
男性の食に対する欲や好奇心は、女性ほどには旺盛でないのかもしれません。
「昼はタイカレーで夜はイタリアン? やだよ、そんなの。俺はとにかく日本の食い物が好きなんだ」という男性が多いように感じます。
だとするなら、デートも和食オンリーで攻めてみたらどうですか。
ネットでよく見る人気の和食は「照り焼きチキン」「豚肉の生姜焼き」「カレイの煮付け」「サバの味噌煮」などで、「肉じゃが」もおそらくこの部類に入るでしょう。
どれもおいしそうですが、それは和食というよりも、どちらかというとごく普通の家庭料理、お子さんがいるおうちの定番メニューと言ったほうがよいような気がします。
ユネスコ世界無形文化遺産に登録された「和食」は、一汁三菜を基本とし、ダシのうま味を活かすことにより、動物性油脂や塩分を控えた健康的な食事のことです。
一汁三菜の食膳は、ご飯(白米)と汁物、そして旬の食材を活かした煮物・焼き物などのおかず3品を加えてワンセットとしています。
「俺がよく行く小料理屋、それから割烹なんかも、煮物・焼き物は得意だよ」と、心当たりのある方は多いでしょう。
そういうお店へ彼女を案内するなら、いつもの流儀で「ツマミは枝豆、それから刺身、あとは焼き鳥」で酒をガブガブというのではもったいないと思います。
季節の野菜の煮物と焼き魚、それから牛鍋などでゆっくりと杯を傾け、最後にご飯・味噌汁・香の物のセットをいただいて締める、というのがカッコいいですね。
お酒はあってもなくてもいいのですが、それこそ一汁三菜の和の食膳となります。
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豪華な和の食事をふるまいたいときは、料亭を予約してお連れするという方法も考えられますね。
ちなみに、料亭で供されるのは懐石料理または会席料理で、懐石料理は茶道のお点前を楽しむためのコース、会席料理はお酒を楽しむためのコース、とされています。
となると当然、デートにふさわしいのは会席料理ですよね。
先付けのちょっとした料理に始まり、前菜、椀物(お吸い物)、向付(むこうづけ・お刺身)、煮物(旬の野菜の炊き合わせ)、焼き物、強い肴(しいざかな・主に揚げ物や和え物など)、ご飯・香の物(漬物)・留め椀(汁物)、甘味・水菓子(果物)といった順で和のフルコースが展開されます。
私も仕事上のおつきあいで何度かご相伴にあずかりましたが、さすが料亭のお料理は高級な味わいで、器も見事です。
室内調度品、庭園の眺め、きめ細やかなおもてなしも素晴らしいと思います。
料亭では個室へ通されることが多いので、政治家や芸能人がよくやるという「お忍びデート」を自分もこっそり楽しんでいるようなワクワク感が味わえます。
まさに至れり尽くせりの感ありですが、料亭はやはりお値段がはります。
社用で使うならいいけれど、プライベートではちょっと……とためらってしまいますよね。
だったらそんな無理をしないで、リーズナブルな小料理屋か割烹でよいと思います。
「飲みに行く」のではなく「和食専門店の味を味わいに行く」という点を意識して、旬の食材を中心に「一汁三菜」をオーダーすれば、それだけでもう気分は正統派の和食デートとなります。
和食デートの寿司・天麩羅・蕎麦・鰻etc.
世界中で人気が高まっている「和食」は、一汁三菜を基本とする健康的な食事のことですが、寿司・天麩羅・蕎麦・鰻なども和食と言ってよいと私は思っています。
というか、私たち日本人の感覚からすると、寿司・天麩羅・蕎麦・鰻こそ和食の代表格ですよね。
しかし、日常的に馴染みの深い食べ物ゆえ、正しい食べ方やマナーをないがしろにしてしまうことが往々にしてあるのです。
ここでちょっとおさらいをしてみませんか。
和食デートをよりカッコよくきめることができると思います。
【和の食事・基本マナー】
・箸を手に構えるときは、左右の手を使って構える。
・ご飯の碗や味噌汁(お吸い物)の椀を手にとるときは両手でとり、口に運ぶときは左手で底を支えつつ、器の縁に親指を添えて安定させ、かつ右手で右側を支えるようにするとよい。
・汁物の具は箸で持ち上げて食べ、汁を飲むときは音を立てないように気をつける。
・汁の具を口に入れたまま、汁を飲むのはマナー違反。
・器を置くときは、先に箸を置いてから、器を両手で持って静かに置く。
【寿司】
・イカや白身魚など味が薄めで淡白なネタからスタートし、そのあとで脂が乗った濃厚な味わいのネタを注文する。
・数種の寿司を一皿盛りで供された場合は、左から順に食べることが望ましい。(最もおいしく食べられるよう、左から順に並べられているので)
・握り寿司は、横に寝かせてネタに醤油をつけ、できるだけ一口で食べるようにする。
・シャリとネタを分けて食べるのはマナー違反。
・軍艦巻きは、横にするとネタがこぼれ落ちてしまうため、ガリに醤油をつけてネタの上に少し垂らし、これもできるだけ一口で食べるようにする。
・握りや軍艦巻きは、手で食べても箸を使ってもよい。(ただし、「ガリ」は必ず箸で食べる)
・わさびが苦手な場合は、注文時に「サビ抜きで」とリクエストしてよい。
・ちらし寿司は、ネタを箸でつまんで醤油に浸し、寿司飯の上に戻してご飯と一緒に食べる。
・お茶のことを「あがり」、お会計のことを「おあいそ」と言うのは、マナーを知らない人がすること。お茶は「お茶」、お会計は「お会計」と言うのが、お客として正しい振る舞い方。
【天麩羅】
・天麩羅は冷めると味が落ちるので、揚げたてをすぐ食べる。
・数種の天麩羅を盛り合わせている場合は、盛り合わせの景色を崩さないように、手前から食べていくとよい。(手前に海老・イカ・ハゼ・キスなど淡泊な味わいの食材が、後ろにホタテ・穴子・かき揚げなど味の濃いものが置かれている)
・キスや海老などの魚介類は水分を多く含むため、時間が経つほどに衣に水分が移ってサクサク感がなくなっていくので、早めにいただくとよい。
・貝類は余熱によって柔らかくなるので、少し時間を置いてから食すほうがよいとされている。
・蓮根や南瓜などの根菜類は余熱が回ると甘みが増すので、時間をおいてもおいしくいただける。
・天つゆか塩か、薬味の大根おろしをどうするかは、自分の好みで調整してよい。(お店の人にオススメの食べ方を聞くのもよい)
・天つゆの器を左手に持ち、天麩羅を3分の1くらい浸して、衣がふやけないうちにすぐにいただく。
・天麩羅を直接、塩皿につけると塩辛くなるので、塩は天麩羅全体に振るようにするとよい。
・レモンなどが添えられている場合は、搾り果汁が周囲に飛び散らないように、左手を添えて覆いながら搾る。
・天麩羅を取り皿にとり、一口で食べにくいものは皿の上で適度な大きさに箸で切ってから口に運ぶとよい。
・海老の尾を食べられない場合は、取り皿の上で尾に懐紙をかぶせて挟み、お箸を使って身と尾に分けてから、身だけいただく。
・海老の尾やししとうの軸などを残す場合は皿の隅にまとめ、上から新しい懐紙を一枚乗せる。
【蕎麦】
・蛸ワサ・板ワサ・出汁巻き玉子焼き・天麩羅などをツマミにお酒を飲み、締めにざる蕎麦をツルッといただくのが粋。
・小麦粉を加えず蕎麦粉のみで作った十割蕎麦は、茹であがりから刻一刻とコシが抜けてのびやすいので、素早く食べる。
・小麦粉を加えた白っぽい蕎麦は、十割蕎麦に比べてのびにくい。
・蕎麦につゆや薬味を使わず、そのまま2、3本すすってみるのが粋な食べ方。鼻に抜ける香り、つるりとした食感、のど越しの爽快感が感じられれば、すでにあなたは立派な蕎麦通。
・蕎麦にほんの少しだけ塩を振って食べるのも粋な食べ方。
・つゆに軽く唇をつけて味を確かめ、辛口で塩味が濃い関東風のつゆならば、蕎麦をあまりつゆに浸さずに食べるとよい。関西風の薄口つゆならば、深く浸して食べるとよい。
・葱や山葵などの薬味は、蕎麦の上に少しずつ乗せて食べると、いっそう味わい深い。
・蕎麦は音を立ててすするべき。(勢いよくすすることにより、口から鼻腔へと蕎麦のさわやかな香りが運ばれる)
・蕎麦をすする途中で噛み切らない。口に入れたものを数回噛んで飲み込むようにするとよい。
・蕎麦を食べ終わったら、仕上げに蕎麦湯をいただくのが一般的な食し方。そのまま飲んでよし、つゆで割る、薬味を入れるなどももちろんOK。(蕎麦湯は蕎麦のゆで汁のことで、ルチン・ビタミンB1・B2といった蕎麦の栄養が豊富に含まれているので健康効果あり)
【鰻】
・鰻重または鰻丼を注文すると、「重箱(または丼)・お吸い物・漬物」の3点が出されるのが一般的。
・まずは重箱(または丼)の蓋を開け、次にお吸い物の蓋を開け、裏返した状態で傍らに置く。(左側に置かれた器の蓋は左に置き、右側に置かれた器の蓋は右に置くことがマナー)
・鰻重や鰻丼は、器を手で持ち上げて食べても、器を卓上に置いたまま食べても、どちらでもOK。
・器に口をつけて、かきこむように食べるのはマナー違反。
・山椒を振りかけるときは、鰻の下にあるご飯の表面に振りかける。(こうすると、ご飯と鰻に染みこんだ甘いたれを味わった後に、山椒のピリリとした風味が口中に広がるのを楽しめる)
・鰻重ならば、重箱の「左下」から食べ始め、左から右に向かって食べ進むようにするとよい。
・重箱の中身を半分まで食べたら、重箱を180度回転させ、また左下から右に向かって食べていくと、きれいに完食できる。
・食べ終わったら、裏返して置いてあった蓋をそっと手にとり、最初と同じように器に被せる。
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ここまで読んでいただいたとおり、和食をいただくときのマナーはいろいろありますが、ナイフ&フォークを流暢に使いこなすことに比べれば、ごく簡単でしょう?
ちょっとよそゆきの服に着替え、よそゆきのマナーで和のお食事をする。たまにはそんな時間も必要だと思います。
ほどよい緊張感があり、お酒が進むにつれてほぐれていく、というのがよいですね。

【今回のまとめ】
●洋食が苦手な男性は、和食デートで攻めてみよう。
●気張って料亭へ行くよりも、おいしい小料理屋や割烹でいい。
●マナーに則って食事をすれば、和食デートをよりカッコよくきめられる