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文章力/助詞を完璧に使いこなす女子「伊豆の踊子」

投稿日:2017年5月19日 更新日:

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「日本語を正確に使いこなせるかどうかは、助詞をどれだけ使いこなせるかにかかっている」

という説があります。

まさしくそのとおりだと思います。

そこで今回は、助詞を使いこなす方法を探ってみようと思います。

───────────────

助詞の中でも殊に「が」の出番は多く、しかも、「が」を「は」に置き換えて意味がそう変わらない場合が多々あります。

そのいっぽうで、「が」を「は」にすると、意味がまるで違ってしまう場合もあります。

「が」と「は」の使い分けはむずかしいのです。

それを神業ともいえる高度なテクニックで使いこなしている好例をご紹介します。
川端康成『伊豆の踊子』の一節です。

●伊豆の踊子

【引用】

踊子やはり唇をきっと閉じたまま一方を見つめていた。

縄梯子(なわばしご)に捉(つか)まろうとして振り返った時、さよならを言おうとしたが、それも止(よ)して、もう一ぺんただうなずいて見せた。

<質問>

・さよならを言おうとして止したのは誰ですか?

1.「私」
2.「踊子」
3.この文中には示されていない人

(正解はおそらく、2)

<質問>

・もう一ぺんただうなずいて見せたのは誰ですか?

1.「私」
2.「踊子」
3.この文中には示されていない人

(正解はおそらく、2)

<解説>


・作者川端康成は「私は」ではなく私がと書いています。

・「私は」ではなく「私が」としたことにより、その後の文の意味が決定づけられています。

「踊子やはり唇をきっと閉じたまま一方を見つめていた。

(そして踊子は)、私縄梯子に捉まろうとして振り返った時、さよならを言おうとしたが、それも止して、もう一ぺんただうなずいて見せた」

と読むのが適切だと思われます。

もしもこれが、「私は」だったなら、さよならを言おうとして止したのも、もう一ぺんただうなずいて見せたのも、「私」がしたことと解釈するのが妥当でしょう。

(私縄梯子に捉まろうとして振り返った時、さよならを言おうとしたが、それも止して、もう一ぺんただうなずいて見せた。)

↑このようになります。

<補足>

・例文の冒頭部分は、「踊子はやはり」となっていますから、踊子がどのような状態だったか、すでに前の文で説明されているのでしょう。

・相手がすでに知っていると思われる情報を示すときには「」を用い、相手がまだ知らないであろう情報を示すときには「」を用いる、というのは、あくまでも目安です。

・読者にとって未知の情報であっても、「〜は」という表現こそ適切だという場合は多々あります。
(例/アップル社のみなさん、こんにちは。私創業者のスティーブ・ジョブズと申します。)
(↑「私スティーブ・ジョブズと申します」という表現は適切ではありません)

●まとめ


『伊豆の踊子』は、「が」と「は」の使い分けが絶妙でした。

助詞を的確に使いこなす女子は素敵です。
助詞を的確に使いこなす男子も素敵です。

関連記事→「てにをは」の使い方を間違えると意味不明の文になる

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