雲の量が、10点満点で1程度のときも「快晴」に分類される。
というように、天気は雲によって決まるんですね。
雨や雪が降るときも、その雨や雪のもととなっているのは雲です。
すべては雲のありかた次第なのです。
気象学は雲に始まり雲で終わる、と言われているほどです。
●雲の正体
雲ひとつない晴れ渡った空も爽快でいいけれど、私はどちらかというと、雲のある空を見るのが好きです。
雲にはいろいろな形があり、ソフトクリームみたいに見えたり布団の綿に見えたり、と想像力が刺激されます。
それはまるで生き物のように見えます。
見つめていると刻一刻と形を変えていくのも面白い。
風とともに流れゆく雲というのも、風情が感じられて素敵です。
雲があるから空に表情が生まれるのだと思います。
ところで、
水蒸気?
地球の表面から蒸発した水が水蒸気になって、大気中に含まれるのよね?
それが雲の正体?
お湯を沸かすと白い水蒸気があがるのが見えます。
でも、上空の水蒸気は太陽の光を通すので、目に映りません。
だったら雲はどうして目に見えるのでしょう?
えーと、それはね。
上空にいくほど、大気の圧力(気圧)は低くなります。
そして大気に含まれる気体(水蒸気)は、
という性質を持っています。
そのため、上空にのぼった水蒸気はどんどん膨らんでいきますが、そこに外から熱が加わって温められなかった場合は、
冷えて固まったものは光を反射してさえぎります。
だから、目に見えなかった水蒸気が雲の形となって見える
ようになるのだそうです。
温度がうんと下がり、水蒸気から細かい氷の結晶になった場合も、やはり目に見えるようになります。
それが上空にふわふわ浮いていて、大気が支えきれなくなると落ちてくるというか、「降って」くるというわけです。
●空気が上昇して雲ができる
日射によって地表が温められると、空気が上昇して雲をつくります。
また、上空に冷たい空気が来た場合も、空気が上昇して雲をつくります。
場所によって地表の温度が異なる地点では、気流が収束して上昇気流が生じることがあります。
そのようにして上に押し上げられた空気が雲をつくります。
寒冷前線の付近では、寒気が暖気の下にもぐりこみます。
すると暖気が上に押し上げられて、雲をつくります。
温暖前線の付近では、暖気が寒気の上に這い上がります。
すると広い範囲にわたって、雲の層が何段もできます。
空気(風)が山脈に向かって吹きつけられると、空気は山の斜面にそって上昇します。
そして、前述の断熱膨張の作用によって空気が冷却し、雲がつくられていきます。
●雲は大きく分けて3種類
雲の形はさまざまあり、無限と言っていいほどです。
それを科学的に分類するという作業を最初に行なったのは、イギリス人のハワードという人物でした。
1803年に発表された論文によると、雲は次の3種類に分類されています。
・積雲
・層雲
この3種を基本とし、それらが結合してさまざまなバリエーションを生みます。
・絹層雲
・層積雲
・雨雲
など。
ハワードの分類法は当時としては優れたもので、世界で広く用いられるようになりました。
その後の1894年、雲を研究する大家が世界中から集まり、従来の分類法の不備を補う取り決めがなされたそうです。
そのようにして定められたのが、現在の「十種雲形」です。
●10種の雲形
・絹雲
「絹雲」とは、その名のとおり、絹糸がもつれたような繊細な雲です。
細くたなびき、白く輝いて見えます。
・絹層雲
白くて薄いベールのような雲を「絹層雲」といいます。
この雲が全空を覆うように広がると、太陽や月は大きな暈をかぶったように見えます。
・絹積雲
小さな絹雲が規則的に並んでいるものを「絹積雲」と言います。
うろこ雲、波形の雲など、美しい文様を描く場合もあります。
・高積雲
「高積雲」というのは、前述の「絹積雲」よりもずっと大きなかたまりの雲で、丸みがあり、灰色がかっています。
縞や波の形をしていることが多いようです。
・高層雲
「高層雲」は、空一面に広がる灰色の雲です。
雲に厚みがあるときは、太陽がぼんやり見えたり、まったく見えなくなったりします。
・乱層雲
「乱層雲」は別名「雨雲」ともいわれ、暗い灰色をしています。
この雲が広がると、どんよりとした曇り空となり、太陽を隠してしまいます。
・層積雲
「層積雲」というのは、雲が層状または塊状になったものです。
色は白または灰色で、形はさまざまですが、雲の底の形ははっきり見えるという点が共通しています。
・層雲
山腹にかかる霧を遠くから見ると、上空の低い位置に雲の層が広がっているように見えます。
そうした雲を「層雲」と言います。
雲が濃くなると、霧雨が降ります。
・積雲
雲の底は平らで、頂に向かってむくむくと盛り上がった形の雲を「積雲」と言います。
塔のように盛り上がったものは「入道雲」です。
晴れた日によく見かける雲ですね。
・積乱雲
入道雲の頂が絹雲層に達すると、雲は大きく横に開いて、「積乱雲」というものになります。
この雲の下では、激しい雷雨となります。
●日本に伝わる、風情ある雲の呼称いろいろ
現在の気象学では、雲は上記の10種類に分類されますが、それとは別に、日本に古くから伝わる雲の呼称がいろいろとあります。
数えてみると、28種類ありました。
雲そのものというよりも、曇り空の様子を言い表す言葉です。
そのいずれをとっても、移りゆく雲の形と空の景色が目に見えるような、素敵な呼称です。
・花曇(はなぐもり)
桜の季節は天気の移り変わりが激しいもの。
そんな時季によく見かける、やがて雨になりそうな気配の曇り空を「花曇り」と言います。
「花曇りのような笑顔」といえば、今にも涙をこぼしそうな表情のこと。
嬉しそうだけれど今にも嬉し涙をこぼしそう、というときなどに使えますね。
・鳥曇(とりくもり)
春、北国へ帰っていく雁、鴨、鶉などの渡り鳥の羽音が聞こえてくるような、風のある曇天を「鳥曇り」と言います。
・鰊曇(にしんくもり)
晩春、北海道の海に鰊がやってきます。
その気配を思わせるような曇り空を「鰊曇り」と言うのですね。
大漁を期待できそうなのでよいことだけれど、嵐の前の静けさになんとなく不穏な雰囲気もあり、武者震いがするといった感じでしょうか。
・雲海(うんかい)
飛行機の窓から見た美しい雲に感激したという人は多いでしょう。
見渡すかぎり白い雲が海のように広がっている景色は、本当に素晴らしいものです。
この景色を「雲海」と言うのですね。
飛行機だけでなく、夏場は山頂からも、「雲海」を見ることができます。
・卯月曇(うづきくもり)
卯の花が咲く頃といえば、旧暦の4月(新暦でいえば3月)。
その時季によく見られる、しっとりとした感じの曇り空を「卯月曇り」と言います。
・五月闇(さつきやみ)
梅雨が本格的に始まる前の、ちょっとした長雨(五月雨)の頃の空は、昼も暗く、夜は真っ暗ということがよくあります。
そんな空模様を「五月闇」と言うんですね。
ネガティブなことばかり口にしていると、「あいつは五月闇だ」なんて言われちゃいそうですね。
・朝曇(あさぐもり)
夏、炎暑が激しさを増す時季に、「朝曇り」という現象が起きます。
早朝、霞がかかったような感じの曇り空が広がることがよくあるのです。
幻想的で美しい光景ですね。
・白雲(しらくも)
「白雲」とは、読んで字のごとく、青空を背景にくっきりと映える白い雲です。
「はくうん」とも読みます。
・鯖雲(さばぐも)
秋鯖がとれる時季にあらわれる絹積雲のことを「鯖雲」とも言います。
鯖の背の斑点を思わせる形をしています。
この雲は雨の気配に満ちています。
・鰯雲(いわしぐも)
小さな白雲のかたまりが秋の空いっぱいに広がり、鰯の群れのように見えることがあります。
これを「鰯雲」と言います。
・黒雲(くろくも)
「黒雲」は「こくうん」とも言い、まさに黒い雲です。
この雲が空を覆うと、今にも雨が降り出しそうに見えます。
・薄雲(うすぐも)
空に薄くたなびく絹積雲のことを「薄雲」とも言います。
なんとなくはかない印象で、眺めているとちょっとセンチメンタルになりますね。
・浮雲(うきぐも)
空にぽっかりと浮かび、風に従って流れゆく雲のことを「浮き雲」と言うのですが、この言葉は「不安定なこと」のたとえとして使われることが多いようです。
褒め言葉のつもりでも、「彼はとても自由で浮き雲のような人だ」なんて、安易に口にしないほうが無難です。
・綿雲(わたぐも)
綿をちぎったように見える、ふんわりと軽そうな雲を「綿雲」と言います。
・千切れ雲(ちぎれぐも)
綿を千切って捨てたように見える雲を「千切れ雲」と言うんですね。
「綿雲」と似ていますが、こちらは風に乗って軽そうに流れていきます。
・横雲(よこぐも)
風に吹かれて、横に長くたなびいている雲を「横雲」と言います。
・朧雲(おぼろぐも)
「朧雲」とは高層雲の一種で、空一面を覆う灰色の雲のことです。
空にベールがかかったようになり、雨の前兆とされています。
・叢雲(むらくも)
群がっている雲のことを「叢雲」と言います。
という言葉があります。
「花見の時季に風が吹くと花が散ってしまうので困る」
という意味です。
・密雲(みつうん)
密集して厚く重なっている雲を「密雲」と言います。
・断雲(だんうん)
いわゆる「千切れ雲」のことを「断雲」とも言います。
かたまりが千切れて、きれぎれになったような雲のことです。
・乱雲(らんうん)
風に吹かれて乱れ飛んでゆく雲を「乱雲」というのですね。
それが黒い雲だった場合は「雨雲」と呼ばれることもあります。
・入道雲(にゅうどうぐも)
積乱雲の俗称が「入道雲」です。
なぜ入道かといえば、むくむく盛り上がった雲の頂が坊主の頭のように見えるからです。
・雲の峰(くものみね)
入道雲を「雲の峰」と表現することもできます。
ちょっと大人っぽい表現になってよいですね。
山々の峰を思わせるように、高く盛り上がった雲を見つけたら、「雲の峰」と言ってみましょう。
・瑞雲(ずいうん)
朝焼け、または夕焼けで美しく色づいた雲を「瑞雲」と言います。
何かよいことが起こりそうな、おめでたい感じがすることから「瑞」という文字があてられたのですね。
・紫雲(しうん)
朝焼け、夕焼けなどで紫色に染められた雲を「紫雲」と言います。
仏教ではこれを、阿弥陀仏・観音菩薩・勢至菩薩の三尊が乗って迎えにやってくる貴重な雲であるとしています。
・彩雲(さいうん)
朝日や夕日が雲の水滴に反射して、緑色がかったように見えることを「彩雲」と言うのだそうです。
私はまだ見たことがないのですが、その言葉の響きから、さぞきれいだろうな〜と憧れています。
・妖雲(よううん)
何かひどく悪いことが起こりそうな、不穏な感じの空。
そんなときの空模様を「妖雲」と言うのだそうです。
空模様に限らず、たとえばビジネスが難航しそうなときなど、
というように使うことができますね。
・青雲(せいうん)
雲ひとつない青空のこと、また、青みがかった雲のことを「青雲」と言います。
「青雲」と言えば、俗世間を離れて超然としていることのたとえでもあります。
地位や学徳が高いことを意味する言葉です。
●まとめ
天気は雲によって決まる。
雲の正体は微細な水滴や氷の結晶。
雲は大きく分けて10種類ある。
日本古来の雲の呼称もぜひ憶えておこう。
ということを紹介してきました。
これからは、天気をあらわす言葉にも注意をはらっていけるとよいですね。
一例として、「花曇」「鳥曇」といった古来の呼称をパソコン入力すると、きちんと漢字変換されます。(私はATOKを使用しているので)
パソコンが記憶しているのですから、私たち人間もこれらの言葉をしっかり頭に入れて、折に触れ使っていきたいものです。
昔からの言葉を適宜織り交ぜて使っていくと、「あの人は言語感覚が豊かだ」「教養がある」と感心してもらえるはずです。
たとえば──
入道雲を「雲の峰」と言い換えれば、ぐっと大人っぽい雰囲気になります。
「青雲」といえば、「地位や学徳の高い人になれるよう、高い志を持つ」ということです。
「青雲」だけでも通じますが、
とすればよりいっそう、「志が高い」という意味が伝わります。