──この欲求をかなえるために、私たちは無意識のうちに、あるものを使っています。
そのあるものとは、形容詞と形容動詞です。
●形容詞と形容動詞の違い
物、人、事柄、場所など、具体的なものを表す語を「名詞」といいます。
名詞で表したものがどんな性質で、どのような状態であるかを表す語が「形容詞」と「形容動詞」です。
形容詞
(主に) 名詞の性質や状態を表す語
物体
「柔らかい」「柔らかければ」「柔らかかろう」
人物
「賢い」「賢ければ」「賢かろう」
事柄
「むずかしい」「むずかしければ」「むずかしかろう」
場所
「広い」「広ければ」「広かろう」
形容動詞
(主に)名詞の性質や状態を表す語
物体
「柔軟な」「柔軟なら」「柔軟である」
人物
「賢明な」「賢明だ」「賢明なら」「賢明である」
事柄
「困難な」「困難だ」「困難なら」「困難である」
場所
「広大な」「広大だ」「広大なら」「広大である」
・形容詞と形容動詞が果たす役割は同じです。
・違うのは、語尾のかたちです。
・形容詞は、「楽しい」「うれしい」「おいしい」というように、基本形の末尾に「い」がつきます。
・形容動詞は、「愉快な」「愉快だ」というように、基本形の末尾に「な」または「だ」がつきます。
形容動詞の末尾は「〜な・〜だ」
と覚えてください。
「い」「な・だ」を適切に使っていきましょう。
ただし、「い」「な・だ」は、文脈によって変化します。
例を挙げてみます。
【改善例】コーヒーは濃いのが好き。
【改善例】柔らかければ、噛まずに飲み込める。
【改善例】あの人は気持ちが大らかで、さわやかだ。
【改善例】さぞ、悔しかろう。
【改善例】彼をその気にさせるのは容易い。容易いものである。
【改善例】見事な出来映えだ。
【改善例】それほど簡単なら、やっちゃえば?
(それほど簡単なのであれば、やっちゃえば?)
【い・な・だの語尾変化例】
形容詞の末尾「い」、形容動詞の末尾「な・だ」が、文脈によってどのように変化するか、もう少し見ていきましょう。
・会社が遠いので、通勤は楽ではない。(または、楽じゃない)
・実家に近ければ、何かと便利かもしれない。
・木造3階建てでも、造りが頑丈なら大丈夫かな。
・そんなに家賃が安くては、設備は貧弱だろう。
・家賃が高いと、月々の払いが苦しくなる。
・手狭ではあるけれど、使い勝手は良さそうだ。
・聞くところによると、大家さんは太っ腹らしい。
・この物件に出会えたのは幸運だったと思う。
・心が軽やかに弾む。
・未来が明るくなった。
●ここでクイズです
次の例文では「い・な・だ」をどのように変化させるのが適切ですか?
【例文1】今は静かだが、さっきは騒々し○○○。
【例文2】会社が近○にあるので、通勤は楽だ。
【例文3】実家から遠ざかると、何かと不便○○○に違いない。
【例文4】平屋でも、造りが頑丈○○○○不安だな。
【例文5】家賃が安いからといって、設備が貧弱○○○限らない。
【例文6】今よりも家賃は高○なるが、駐車場付きだ。
【例文7】見るからに手狭○あるうえ、使い勝手も悪○○だ。
【例文8】不動産屋の話では、大家さんは太っ腹○○○○ことだ。
【例文9】この物件に出会えたのは、きっと幸運○ゆえだ。
【例文10】気が重○○仕方がない。
【例文11】未来に明○○を感じた。
【解答1】今は静かだが、さっきは騒々しかった。
【解答2】会社が近くにあるので、通勤は楽だ。
【解答3】実家から遠ざかると、何かと不便になるに違いない。
【解答4】平屋でも、造りが頑丈でないと不安だな。
【解答5】家賃が安いからといって、設備が貧弱だとは限らない。
【解答6】今よりも家賃は高くなるが、駐車場付きだ。
【解答7】見るからに手狭であるうえ、使い勝手も悪そうだ。
【解答8】不動産屋の話では、大家さんは太っ腹だということだ。
【解答9】この物件に出会えたのは、きっと幸運のゆえだ。
【解答10】気が重くて仕方がない。
【解答11】未来に明るさを感じた。
●まとめ
人と話をするとき、また、文章を書くときも、形容詞や形容動詞は頻繁に使われます。
もしこれを一切使わないとしたら、その会話や文章は、なんら面白みの感じられない無味乾燥なものになってしまうでしょう。
会話をいきいきと弾ませるために、そしてまた、臨場感のある文章にしていくために、形容詞や形容動詞を上手に使っていきたいものです。
「い・な・だの使い分け」と「い・な・だの語尾変化」に留意してくださいね。
むずかしく考えるには及びません。
誰もが無意識のうちに、ごく自然に、「い・な・だ」を使い分けています。
ただ、最近はちょっと、その使い分けに乱れが生じているようなので気をつけましょう、ということです。