恋愛かくれんぼ

恋愛かくれんぼ・デートノート2011㉓

投稿日:2021年7月25日 更新日:

【2011 November】

2011.11.21

(T子から弟にメール)

三島に特に関心あるわけでもないだろうが、ちょっとおすすめ本。

野坂昭如『かくやく(漢字)たる逆光』私説・三島由紀夫

三島由紀夫『太陽と鉄』は、自身が書きおろした死への憧憬と肉体改造のモチベーション、かな。

どちらも興味深いが、私は野坂による評伝が面白かった。

風邪は大丈夫か。

身体大事にせよ。

…………………………

(弟から返信)

かくやくたる逆光は学生時代に読んだ。

風邪は小康状態。

…………………………

(Kにメール)

●T子──思いついた

放屁力もいいけど、阿部薫×鈴木いづみ評伝を、あなたがやるべきでしょう。

文○社に企画書を持参し、ゴーかけてもらって取材開始という流れを作れると思う。

私をダシに使っていいよ。

…………………………

(ウーちゃんの意見)

T子がK君に執着しているうちは、うまくいかない。

執着がなくなったとき、良縁になる。

それを聞いてT子、なるほど、と思った。

…………………………

(T子記す)

これはKに内緒だけど……。

だって彼の出方を待ったほうが良いから。

橫浜市内の郵便局のバイト、かなり募集がある。

これなら何とかなりそう。

1日6時間・週4日で月8万円コース

1日8時間・週5日で月14万円コース

いずれも6ヶ月の長期契約。

給料安くても、その範囲内で食事酒タバコ新聞ネット電話読書をすればいい。

☆☆

Kは自分で健康保険や年金を払えるかな。

払ってほしいよ。

↑こういう運びにするとして、住むところは、私の実家の近くにしたいので、井土ヶ谷だね。

アパートは寒いので、マンションに引っ越して同居。

家賃6万5千円くらい、できれば2部屋。

机とベッドをもう1つずつ、Kのために。

電話をひこうか、ファクスも使えるようにしようか。

デスクトップとノートパソコンは、ふたりで3台もあるから充分。

☆☆

私が引っ越すのだから、Kはお金かからない。

机とベッドの代金ぐらい、用立ててあげられる。

☆☆

Kにも少しは生活費を入れてもらいたいが。

(今の家賃との差額3万+光熱費=4万くらい)

☆☆

ともかく私のお金を持ち出さなければ、それほど負担にならないだろう。

ただ、Kはこれまでの借金を返済できるだろうか。

頑張ってほしいよ。

☆☆

一緒に住むのか。

大丈夫かな。

喧嘩なんかしないよ。

うれしい、楽しい、安心できる、と思おう。

40年ぶりに願いが叶い、やっと一緒になれるのだ。

↑ばかか、私は。

一緒になるのはいいが、なぜ私が面倒みるという前提で考える?

☆☆

↓しかし、この考えはよろしい!

結婚をして、みんなに祝福してもらうこと。

ふたり一組で堂々と世間を渡っていくこと。

☆☆

【文筆業】

ライター仕事の単行本が、売れてくれますように。

講○社とのお取り引きが順調にいきますように。

ブライダル情報誌原稿の仕事が続きますように。

校正リライトの仕事をもっと増やせますように。

☆☆

【作家・小説家】

三田文学に小説掲載、良い反響ありますように。

群像、小説すばる、連続で受賞できますように。

作家デビューし、ベストセラーを出せますように。

Kも自著を上梓し、売れる道が開けますように。

ふたりが作家として書き続けていけますように。

2011.11.22

(T子記す)

連夜読経。良い流れ祈願。気分安定。

今朝は急に心境変化し、目が覚めた。

憑き物が落ちたというほどではないが。

私はKを負担に感じはじめている。

未練も執着も薄らいでしまった感じ。

酒飲む、身体こわす、老化している、先が思いやられる。

仕事を選びすぎる、働く意欲が低い、金遣いが荒い。

頑固、薄情、不精、身勝手、逃げる。

お互いにストレスをかけあい、気持ちが冷めてしまったのか?

…………………………

(19・20・21、もう3日も連絡がない)

…………………………

11.22

●T子──体調いかがですか。心配。

私への連絡絶つことにしたのかしら。

つまんないな。

☆☆

阿部鈴木評伝の構成案&企画書を作成してほしい。

文○社には私がアポをとり、一緒に行きたい。

☆☆

『売文生活』、私も読んでみる。

☆☆

「日本郵便」ネット検索。

6ヶ月長期の内務アルバイト多数。

月8万、14万もあり。

橫浜東京いずれでも、経験者はきっと採用される。

月14万では一人暮らしできないが、ご家族と共にいられるのでは?

そして書いていく。

私と文通する。

…………………………

(やっと返信きた)

…………………………

●K君──お早う

内臓、五臓六腑は小康している。

足の指先が、「変」。

痛いまでいかないが。

「痛風」か!

☆☆

本日付け『朝日新聞』文芸欄。

新人賞の歩留まりに関しての記事あり。

☆☆

『阿部いずみ』は判らない。

『エンドレスワルツ』。

ただ、この素材と格闘せよ、という深層意識は想像がつく。

…………………………

(T子記す)

近所のミナミ不動産とサンライフ、2軒まわった。

私ひとりが寒さ対策のために1Rマンションへ移転するなら家賃約4万5千円。

ふたり住むための2DKは高い。10万近い。

1Kマンション3物件あり、洋室8~11畳、駅近、日照まあ良し、家賃管理費込みで約6万5千円。

↑これならいけるか。礼金なし、敷金礼金ともになし、の物件もあり。

ダイヤパレスが最も広くて、30平米、6階、6万5千円、敷金礼金なし。

…………………………

2011.11.23

(T子記す)

Kから連絡がなくても平気。

自分でもなんだか不思議なのだが、気持ちは白々として落ち着いている。

不安、心配、ストレスが嵩むと、長年の恋も眩惑の力をなくすものと見える。

平常心で成り行きを静観する。

☆☆

Kが一番いい、Kでないとだめ、Kしかいない。

その気持ちは変わりようがない。

だが私はもはや、男と暮らすことへの憧れが薄い。

良い点も悪い点も経験済み。

☆☆

Kは今夜から郵便局バイト開始か。

…………………………

2011.11.23・24・25・26・27・28・29・30・31

(連絡なしの日が何日続くか、カウントしてみる)

(19日から3日連続で連絡なかった)

(22日に返信あり)

(今また5日連続で連絡なし)

…………………………

(T子記す)

長いつきあいなので、Kの気持ちはおおよそ察することができる。

その純情と薄情、潔癖さとずるさ、強さと弱さ、誠と嘘、複雑にからみあい矛盾を内包する混沌とした意識も想像できる。

そのすべてを受け入れ、絶対的な味方となること。

親兄弟友人にならしてあげられることも、女と男の間ではしにくい。

だが、やってやれないことはない。

…………………………

2011.11.28

●T子──無事?

稼ぎして

酒のむ間なし

いのち延び(?)

☆☆

出稼ぎの

昨日今日明日

飲酒減り

楽になりたる

我が身と心(?)

☆☆

訂正

出稼ぎの 年末年始 火宅より 救われんかな 酒溺身心

…………………………

●K君──まだ生きている!

ショシヨある。

ショシヨある。

郵便局は6日から。

ショシヨ、だよ。

…………………………

●T子──処々? 何が言いたいのよ。

郵便局長期アルバイトに切り替えることができたのかしら。

…………………………

(T子記す)

夜11時頃電話あり、30分ほど話す。

Kの第一声は「元気~?」だった。

ふたりとも風邪ひいた。

似たような症状。

K、熱はないが寝込んだらしい。

寝ているよりほかにやることないから、と。

それでも飲んでいるのね。

私の母方の、久保町のおじいさんが大酒飲みで大虎だったことを話す。

俺は虎にならない、時々は誰かにからみたくて相手を探しに行くこともあるけど、とK。

黄昏れているわりに、やることが子どもっぽいね、と私。

「処々あり」と言っていたわりに、たいした変化はないみたい。

郵便局バイト、今年はきびしくて、開始が延期になった、ネット上の長期バイト募集は偽情報だ、とのこと。

それでも応募してほしかった。

いろいろ心配してくれてありがとう。宅配のバイトは楽しかった(とKは言うが、もはや年末年始の郵便局以外はバイト採用されることをすっかり諦めているみたい)。

おまえだって慶應大学卒業なんて書いたらどこも雇ってくれないぞ。

そんなことない、慶應卒だから公務員バイトの書類審査に通ったと思う。

☆☆

もういいかげんに出て行け、横須賀に戻れと言われている。

そうよ、それがいい。

戻れない、条件が合わずに決裂している。

あんたのやり方、よくわからない。

☆☆

日記帳をおまえに送ろうか、ほかの荷物は全部棄ててくれと言ってある。

そこまで追い詰められて、よく平気でいられる、平気ではないのだろうが、まったくどうする気でいるのか、よほど度胸がいいのかと感心してしまうよ。

女房も同じようなことを思っているだろう、だがともかく郵便局で正月迎えられるのはいい。

…………………………

(T子記す)

本当に、来年いったいどうなっちゃうんだろう。

いきなりうちに転がりこまれたら、どうしよう。

バイトしてくれないと面倒みきれない。

☆☆

来年はなんとかしようね、と私。

そうね、とK。

(ふたり笑)

☆☆

年内に監督に会って、「借金返せない」と言わなければならない、とK。

会ってくれるし、待ってくれるのだから、監督はやさしいね、と私。

☆☆

阿部鈴木評伝やらないの?

取材も執筆も大変だ、田戸台の場面から書き出すしかない、あのふたりと俺とおまえの関係がリンクすることを書くか、それしか書きようがないかも、あとは阿部があの若さであそこまでやれたことをどう解釈するかだが、よくわからない。

今まで誰も書いていない素顔の彼と彼女を書いてほしい、私にあれほど書けと言っていたのだから、あんた書きたいのでしょ。

おまえならいづみを書けるが、俺にはよくわからない。

私がどんな話を持っていっても嫌だと言うのね、ま、書きたくなったときに書けばいいけど。

俺、書けばきっと売れると思う、今は書かないだけ、こういうのを天才という。

それをいうなら唯我独尊、でしたっけ?

『売文生活』読んだが、えらく忙しそうでいやだ、1日何本も書くのはしんどいよ、とK。

ノンフィクションはいろいろ調べなきゃいけないことがあり、大変なんだよね。やはり好き勝手に小説書くのが一番いい、と私。

だが小説は売れない。

私は売れ線。

おまえのその楽天性が継続してくれるといい、たまにどーんと落ちこんで暗いこと言ってこられるとつらい。

落ちこむのではなく、たまに正気にかえるだけ。

…………………………

(T子記す)

雑誌の仕事が片付いて、今は講○社、それを終えたらドブ板トランジットの修正、三田に期限延長を頼んだこと、12月22日までに送るよう言われたこと、三田向けに別タイトルを考えている、いい案ないか、などをKに伝えた。

Kは私の気持ちが離れてしまったのではないかと恐れていたのかもしれない。

今日はこのへんでいいかな、連絡してくれてありがとう、なんてKは言っていた。

…………………………

●T子──(追加でメール送信)

アルフ○ポリス社長から、歳暮御礼の電話あり。

ライター業や小説執筆の近況など尋ねられ、しばし雑談。

社長いわく、「次に依頼する仕事を今準備中。T子さんリライトはOK。だが誤字脱字の見落としがまだあるようなので、多忙であっても校正の勉強をしてくれるといい。そうすれば発注案件を増やせる」とのこと。

これを受けて検討の末、私は日本エディタースクール通信教育を受講することにした。

教材を複写し、あなたと弟に回すので、みな勉強してもらいたい。

…………………………

●K君──薫といずみ

一粒種を「女優にせよ」と、落剥した元映画プロデューサーに、かつての「女」がひきあわせる。

としたら、動くかも。

…………………………

●T子──「動く」の主語は誰?もしくは何?

Kが書く、小説を。

文○社向けではなく、文芸誌新人賞獲得に向かって。

作中に薫いづみあづさ、T子も登場するが、実名は使用しない。

モデル本人および親族への取材はしない。

いづみ本とT子の証言は参考にする。

原稿料として、新人賞の賞金と単行本印税。

その前借りは不可能。

ということで合ってるかしら?

…………………………

●K君──主語は、主人公。

夭逝した薫と、あずさが、コミュニケーションできるか。

あずさっていくつ?

まだ独身?

…………………………

●T子──あづさ、もう30代だろう。

図書館にある鈴木いづみ本を検索してください。

『鈴木いづみ×阿部薫ラブ・オブ・スピード』『鈴木いづみ語録』あたりに、あづさ写真付きで荒木さんと対談している。町田氏もいたか。

あと、インタビューに応える記事もあったと記憶している。

…………………………

●K君──町田町蔵?

今日はパソコンで大丈夫、夕方まで。

…………………………

●T子──

>町田町蔵?

↑そうかな。作家になって町田康?

☆☆

パソコンで図書館収蔵書籍の検索と予約ができるでしょ。

…………………………

●K君──町蔵、町田康。

デビュー前、いっしょに映画やってた。

『lNU』っていうパンク。

…………………………

●T子──映画エンドレスワルツで阿部さん役やったのが町田氏でしょ。

あづさは父親との思い出、何一つないだろう。

大人になった今は許されると思うが、子どものうちは、「親のことを話題にしちゃいけない」とカウンセラーからお達しが出ていた。

私は、いづみさんの弟からそう聞かされていた。

…………………………

(その夜)

●K君──薫といづみ

(やっと、「いづみ」と書くようになった)

おれなりには、見えた。

「評伝」ではない。

純文だろう。

親父と娘。

あなたとの関係でもある。

そこで成立するか。

生き恥さらして生きちまった。

『文学界』。

金の話しはするな。

…………………………

●T子──OK!

私もうれしい。

…………………………

●K君──そんな時代が、あった。

ってことかな。

エイジング小説。

反論不要。

返信不要ですよ。

●K君──平岡正明『日本ジャズ者伝説』平凡社は、横浜。

阿部薫追ってたら、平岡。

幻冬舎見城、いづみに薫書け。

…………………………

●T子──

>『日本ジャズ者伝説』平凡社は、横浜。

↑面白そう。いずれ私も読んでみようかな。

平岡さんの文章、わりと好きだし。

あなた、平岡さんが生きているうちに会えばよかった。

☆☆

五木寛之も阿部薫評を、雑誌に書いてたと思う。

>幻冬舎見城、いづみに薫書け。

↑書いた。『感触』『ハートに火をつけて』など。

…………………………

●K君──あの時代のヨコスカが、スケルトン。

…………………………

●T子──平岡さんは挑発的だから、頭冷やして読まないと。

だが、よし、トランジットの参考に、読もう!

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