暮らし歳時記

ひな祭り、お雛様をいつまでも飾っておくと婚期を逃すって本当?

投稿日:2018年1月3日 更新日:

3月3日は桃の節句、女の子のお祭りの日ですね。

男子の祭りである端午の節句よりも、桃の節句のほうが、世の中全般が盛り上がっているように感じますが、気のせいでしょうか?

いえ、実際にそうですよね。

小さな女の子だけでなく大人の女性も、3月3日のひな祭りは心浮き立つものがあります。

なんといっても、雛人形と桃の花という取り合わせが華やかで美しく、優雅な気分にさせてくれますし、女の子同士集まっておしゃべりを楽しみたいという気になるのです。

●お雛様をいつまでも飾っておくと、結婚できなくなる?

私もハタチ過ぎるまでは毎年、両親がお雛様を飾ってくれました。

うちにあった雛壇はたしか五段で、緋色の布が掛けてありました。

子供の頃、それは見上げるほどの高さで、天井まで届きそうでした。

精緻な造りの雛人形やお道具の数々がずらりと並んでいるのが何とも誇らしく、明るい未来を約束されているように感じたことを憶えています。

今にして思うと、娘の健やかな成長を願う親心に包まれていたんですね。

ありがたいことです。

3月3日が近づくと、女の子のいるうちではたいてい雛壇を飾っていましたから、近所の女の子たち数人で家々を回ってお雛様を見せてもらい、その家のお母さんがくれる雛あられをおやつにして仲良く遊んだのも、いい思い出です。

でも、翌日にはもう、どこの家にもお雛様がありません。
3日の晩か、4日の朝早くに、片付けてしまうのです。

「お雛様、どこにしまったの?」と母に訊くと、
「押入の天袋に大切にしまったよ。また来年ね」と言われました。

そして母は、
「お節句を過ぎてからもお雛様を飾っておくと、いきおくれになるからね」
なんてことも言っていました。

いきおくれ、つまり「嫁きおくれ」という言葉をまだ知らなかった私は、あわてて訊き返しましたよ。
「お雛様をいつまでも飾っておくと、私どうかなっちゃうの?」と。

母が言うには、
「結婚できなくなるかもしれない」
とのことでした。

びっくり〜!!
子供ながらにショックでしたよ〜!!

ってことはつまり、いいひとに巡りあって恋愛しても、婚約や結婚には至らないということ?
婚期を逃してしまうの?
それって本当のこと?
ただの迷信じゃないの?

大人になった今でも不思議です。

私の場合は、3月3日を過ぎてもお雛様を出しっ放しにするなんてことはなかったにもかかわらず、事実、未婚です。

結婚できない(しない)のはお雛様のせいではないと思うのですが、だとしたら何故、あんな迷信じみたことが言われるようになったのでしょう。

気になります。

私の場合にかぎらず、結婚しない女性が増えている今、また、晩婚化が進んでいる今、その本当の理由が気になります。

●非婚・晩婚が増えている本当の理由

内閣府による「家族と地域における子育てに関する意識調査」では、未婚の若い男女を対象に、さまざまな質問をしています。

その回答を見ると、

「いずれは結婚したい」(52.0%)

「2~3年以内に結婚したい」(10.0%)

「すぐにでも結婚したい」(9.6%)

という結果で、7割以上の人が「結婚したい」と望んでいることがわかります。

なのに、若い世代がなかなか結婚しない(できない)理由は何なのでしょう。

・男性の場合は、

「経済的に余裕がないから」

という回答が最も多く、5割以上を占めています。

・女性の場合は、

「独身の自由さや気楽さを失いたくないから」

「希望の条件を満たす相手にめぐり会わないから」

という理由に加え、

「経済的に余裕がないから」

という回答がやはり多かったようです。

男女いずれの場合も、未婚や晩婚の背景に経済的理由があるということですね。

●お雛様を早く片付ければ、娘も早く片付く?

今は晩婚・非婚の傾向にありますが、昔は、女性が25歳を過ぎても結婚せずにいると、
「適齢期を過ぎた」
「嫁きそびれた」
「売れ残り」
などと言われていました。

ですから親としては、娘がまだ若いうちになんとかして結婚させようと必死だったでしょう。

娘を早く片付けたいから、お雛様も早く片付ける。

という発想が生まれたのは、そんな事情があったのでしょうね。

●お雛様を飾ったままにしておくと、悪運がつく?

もう一つ、考えられることがあります。

お雛様を飾ったままにしておくと娘に悪運がつく。

と恐れる気持ちがあったのではないかということです。

というのも、お雛様というものは本来、

女の子に悪運がつかないよう、人間の穢れをお人形に移して水に流す。

ためのものだったからです。

●「曲水の飲」と流し雛

3月3日を「桃の節句」と言いますが、正式には「上巳(じょうし)の節句」です。

桃の花が咲く時季なので「桃の節句」とも言われ、桃の花や菜の花など、自然の生命力をもらって厄災を祓います。

「上巳の節句」は、中国から伝わった「曲水の飲」と、日本古来のお祓いの風習とが合体して起こりました。

昔、中国ではこの日、上流階級の人々が池や川など清流のある所へ行って「流杯曲水の飲」をしたとされます。

↑曲水(水の流れ)に杯を浮かべて、その杯が所定の場所に到着するまでの間に詩をつくって競い合うという、風流な遊びが盛んだったのです。

この風習が平安時代に日本にも伝わり、貴族階級に広まりました。

平安貴族たちはこの日、水辺で詩を作ることに加えて、陰陽師を呼んでお祓いの行事もしたそうです。

↑人間の形を模して作られた紙製の人形(ひとがた)で身体をなでることによって、自分の穢れを人形のほうに移し、それを川や海に流すのです。

このお祓いの道具としての人形が、単なる紙の人形から発展し、押し絵や胡粉塗りを施した豪華なものになっていきました。

↑こうした豪華な人形が、雛人形の原型だとされています。

●お雛様を川や海に流す「ひなおくり」の風習

人形に穢れを移して水に流し、災厄を逃れるという風習は、3月3日「上巳の節句」の節句の行事として、全国各地に広まりました。

今でも地方によっては、3月3日の節句には紙や布で作ったお雛様を携えて野遊び・山遊びをしたあと、お雛様を川や海に流す「ひなおくり」の風習が残っています。

こうした「ひなおくり」の風習があることを知っている家庭では、

「お雛様に厄を背負ってもらって水に流さないと、娘によくないことが起きるのではないか」
「悪運がお雛様に取り憑いて、娘の幸せを阻むのではないか」

と親が心配することもあったでしょう。

しかし、現在一般に販売されている雛人形は効果なので、水に流して捨てるなんて、もったいないことはできません。

「ひなおくり」はできないが、その代わりに、早めに箱に収めて保管し、来年も再来年も飾って大切にしよう

と考えるようになったのかもしれませんね。

●きちんと飾れば、お雛様はきっと喜んでくれる

人形は、その持ち主である人物の身代わりともなりうる、ありがたい存在です。

できるだけ大切に扱うことが望ましいといえますね。

お雛様を出しっ放しにするのもよくないけれど、何年も収めったままというのもよくないでしょう。

毎年きちんと飾ってさしあげることにより、お雛様は喜んでくれるのではないかと思います。

お雛様の飾り方

●雛壇の最上段に男女一対の内裏雛(だいりびな)を飾り、背景に屏風、左右に雪洞(ぼんぼり)を置く。

●2段目に、三人官女(さんにんかんじょ)や五人囃子(ごにんばやし)を飾る。

●その下段に左大臣(さだいじん)と左近の桜、右大臣(うだいじん)と右近の橘(たちばな)、三人仕丁(さんにんしちょう)などの雛人(ひなじん)を飾る。

●お雛様のお道具として、ごく小さな箪笥(たんす)、長持(ながもち)、鏡台、針箱、鋏箱(はさみばこ)、重箱、駕籠(かご)、御所車(ごしょぐるま)などを飾る。

●菱餅、白酒、ひな菓子などを供える。

●娘の嫁入り道具のミニチュア版

宮廷で用いられる調度品など、お道具立てが凝っているのも、お雛様の魅力です。

ミニチュアながら、精緻な造りの箪笥、長持、鏡台、針箱、鋏箱、重箱、駕籠、御所車などが飾られるのは、

娘が大きくなったら、嫁入り道具にこういう立派なものを持たしてやりたい。

という親心のあらわれですね。

このようにして飾った豪華な雛壇に、桃の花や菜の花を活けて供え、雛壇の前にお膳をしつらえて、ちらし寿司とハマグリのお吸い物といったご馳走をいただき、白酒を飲んでお祝いするのは本当に楽しいひとときです。

お雛様もきっと喜んでくれるはず。

よいご縁を結んでくださるとよいですね。

関連記事→エイプリルフール、上手な嘘のつき方

-暮らし歳時記

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

良い新年を迎える準備

12月は、1年の締めくくりの月です。 年末の仕事納めや大掃除、加えて新しい年を迎える準備をしなければならないので、会社でも家庭でも何かと慌ただしい日が続きますね。 日頃は落ち着いている偉い先生がた、つ …

知ればちょっと得した気分になる「名数」

「名数」というものがあるのをご存じでしたか? 私はつい最近、知りました。 名数とは何か。 Wikipediaを見ると、こう解説されています。 名数(めいすう)とは、同類のものをいくつかまとめ、その数を …

6月は水無月(みなづき)

●6月の別名・異称・愛称 6月のことを別名「水無月(みなづき)」といい、水の月という意味です。水月(みなづき)と書いてもよいそうです。 ↑水があってもなくても「みなづき」と読み、「水の月」であるとして …

四季折々の季語の世界

世界で一番短い文学。 それは俳句です。 俳句(はいく)とは、五・七・五の十七音でつくられる定型詩で、 十七文字(じゅうしちもじ)十七音(じゅうしちおん) 十七語(じゅうしちもご) とも呼ばれます。 た …

快晴・晴れ・曇り・薄曇り。天気は雲によって決まる。雲のことをもっと知りたい。

雲がまったくない青空ならば「快晴」。 雲の量が、10点満点で1程度のときも「快晴」に分類される。 雲の量が2〜8ならば「晴れ」。 9〜10になると「曇り」。 同じ曇りでも、雲の大部分が上空5〜13キロ …

2023/06/29

「を抜き」「は抜き」を改善しよう

2023/06/23

「か抜き」言葉を改善しよう

2022/12/01

「お申し付けください」よりも「仰せ付けください」のほうが良いなあ

2022/08/15

男と女の日常茶飯劇

2022/04/01

ライターが習得した速読法

2022/03/30

「十分」と「充分」に違いはある?

2021/12/26

Kindleペーパーバック出版、私もやってみました。

2021/01/19

「XX時からXX時に行きます」という言い方は、変じゃない?

2020/09/07

主語がなくても通じる、日本語の不思議

2020/08/27

チーママ・オーママ/小ママ・大ママ

2020/02/27

表記統一の観点からいうと、「行う」ではなく「行なう」が正しい

2020/02/26

「語尾上げ」しゃべりが癖になっていない?

2020/02/06

TOKYO MXテレビ『5時に夢中!』に出演しました。

2019/11/29

ものの数え方・73選

2019/11/28

馬から落馬・顔を洗顔←重ね言葉はやめよう

2019/11/27

カタカナ語の乱用防止に、この日本語を!!

2019/11/16

「理想」の対義語は□□、「流行」の対義語は□□。

2018/10/18

頭から離れる?離れない? 正しい言い方はどっち!?

2018/09/18

横浜に代々伝わる「ハマ言葉」

2018/09/03

文章構成術/基本フォーマット12種類

2018/03/10

なぞなぞ傑作選・必笑78題

2018/03/09

テープ起こしをすると文章力が高まる!!

2018/03/02

ネガティブなことをポジティブに言い換えるレッスン

2018/02/16

「い抜き言葉」はカジュアルな場面でのみOK

2017/10/03

月の呼称/睦月・如月・弥生・卯月・皐月・水無月・文月・葉月・長月・神無月・霜月・師走

2017/06/02

読点の打ち方を完全マスター!! ①

2017/05/20

文章力/接続詞の乱用禁止!! 大事な場面で効果的に使おう

2017/05/16

文章力/説明がうまい人は「修飾語」(形容詞・形容動詞・副詞の3点セット)に強い

2017/05/05

悪文リライトにチャレンジしてみませんか

2017/05/04

文章力を高める10の行動。すべて試してみる価値あり!

2017/04/30

混じる?交じる? 漢字の書き分けは、頭をやわらかくする知的なゲーム

2017/04/23

先入感?異和感?それって漢字変換ミス? 同音異義語・同訓異字の落とし穴

2017/04/22

「れ足す言葉」は、くどい、しつこい

2017/04/21

「さ入れ言葉」は上品か下品か?

2017/04/20

「ら抜き言葉」はOKかNGか?

2017/04/16

アブない隠語も、正しく覚えれば失敗しない

2017/04/04

ビジネスマナー/尊敬語と謙譲語の使い分け

2017/03/24

日本語の乱れ/あざーす・やばくね? 変な言葉や言い間違いが増えていますね?

2024/04/17

「値上がる」という表現は不適切。名詞を動詞のように使うときは、できるだけ助詞を付けてほしい。

2024/04/15

主語と述語のつながりが微妙にねじれているように感じられる文って、気持ち悪いよ

2024/04/12

「見せる」と「見させる」の違い・「見せて」と「見させて」の違い

2024/04/10

「ご覧になって」の「なって」は省略可

2024/04/09

「万一○○の時は、いつでも力になるよ」、この文はどこか変だと思いませんか?

言葉をたくさん知っていると、話すのも書くのも自由自在。頭を整理しながら自分の思いや考えを的確に伝えられるので、いつも気分よく過ごせます。仕事や人間関係にきっと良い影響があるでしょう!!

当サイト「言葉力アップグレード」は言葉の世界を豊かにし、話し方・書き方をレベルアップする技術を紹介しています。どうぞご活用ください。

follow us in feedly