文体模写(パスティーシュ)

吉田健一氏の文体模写「河豚とポン酢もみじおろし小葱」

投稿日:2018年1月27日 更新日:

この記事のひとつ手前の記事は、

高級食材の「河豚(フグ)」

について、でした。
前記事→高級食材・フグ、その知られざる秘密

この前記事を有名作家の誰かが読み、手を加えるとしたらどんなふうにするのかな〜〜

という妄想的前提に立ち、遊び心で文体模写をしてみたのが本記事です。

前記事と本記事、併せてご笑覧いただけますなら幸いです。

さて、まずは文体模写について少しお話ししたいと思います。

文体模写、つまり他人の文章スタイルを真似て書くことは、筆力向上におおいに役立ちます。

ですからこれは、暮らしに役立つ歳時記情報をゲットしながら、ついでに言葉力アップグレードをはかるという、一粒で二度おいしい企画なんですね。

年間シリーズ企画としてお届けする予定で、今回はその第9回目、吉田健一氏バージョンをお届けします。

暮らしに役立つパスティーシュ(文体模写)
第9回・吉田健一氏バージョン

「読点」が嫌いなあの作家ならば、きっとこう書くだろう

「河豚とポン酢もみじおろし小葱」

魚というものは白身魚と赤身魚とに大きく分けられる。

白身魚はおおむね高たんぱく低脂肪であるがそうしたなかでもことに河豚は脂質が少ないうえ繊維質であるから弾力が強く、並の歯では噛み切るのに苦労する。

そこで調理人の高度なわざが求められる。

包丁など軽々と弾き返しそうな河豚の身を紙一枚ほどの厚さに削ぎ、その一枚一枚を牡丹の花に見立てて大皿に盛り付けるのである。

半透明の薄い肌から青磁や有田が透けて見えるのはなんとも言えず清涼感があり、旨味成分であるアミノ酸やイノシン酸が含まれているとはいえ、味などなきに等しいというのもいっそ清々しい。

他の大概の食べものならば考えられないことであるが、歯触りと弾力を味わうだけで満たされるものがある。

ただしそれにはポン酢がうまくないといけない。

その名はオランダ語の「pons」に由来し、蒸留酒に果汁を加えたカクテルを意味する。

日本では元来柑橘系の果汁からつくった酢のことを指したが、今では醤油に鰹だしや昆布だしを加えて柑橘類で味付けしたものをそう呼ぶようになった。

地域特産の柑橘類を使ったポン酢があまた存在している。

これの旨いのにあたるとうまい河豚を食ったという気になる。

薬味のもみじおろしは大根に箸などで穴を開けて唐辛子を詰めてからすりおろしたものがよい。

下関で栽培される小葱を添えて出す店ならばいうことはない。

(つづく)

●まとめ

ここに私が文体模写をさせてもらった吉田健一という人は、著名な文芸評論家・英文学翻訳家・小説家であり、吉田茂氏(終戦直後の内閣総理大臣)のご子息です。

彼は読点の使い方に特徴のある書き手で、「意味が通じるなら読点は必要なし」とばかりに、「、」がきわめて少ない長文をものしています。

私もそれに倣って書いてみましたが、一読でご理解いただくことができたでしょうか。

読点は多すぎても少なすぎてもいけない。

 

必要最小限の読点を打つ。

というポイントをおさえることが大切ですね。

私はどちらかというと読点が多いほうですが、必要最小限の「、」が打ってあるならば、怖がらずにどんどん省略してよいのだと考えている今日この頃です。

ついでに申し上げますと、私にとって目下最大の関心事は、フグ料理専門店へ行ける日はいつ訪れるのかということです。

どーんと稼いで、冬の味覚の王者フグを満喫したいと願っております。

関連記事→椎名誠氏の文体模写「銭湯でゆず湯につかってアヂヂヂヂ」

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