「~だ」と言う(書く)よりも、「~です」としたほうが丁寧な表現になります。
しかし、何にでも「です」をつければいいというものではありません。
たとえば、
と言うと、なんとなく幼稚な印象を与えてしまいます。
ではどうすればよいのか。
とすれば、敬語表現として適切で、洗練された大人の表現になります。
●楽しいです、うれしいです
「楽しい」「うれしい」といった形容詞に「です」をつけると、「楽しいです」「うれしいです」となります。
過去形ならば、「楽しかったです」「うれしかったです」となります。
↑こういう言い回しを不自然だと感じるのは私だけでしょうか?
どうもしっくりこないのは、日本語としておかしい点があるからではないかと思うのです。
●大きいです、小さいです
国語審議会というところが、昭和27年発表「これからの敬語」で、次のように示しているそうです。
国語審議会はそう述べているのですが、「大きいです」「小さいです」という表現はどこか据わりが悪くて遣いにくい、と感じている人が少なからずいます。
と私は学校で習った覚えがあります。
「です」の前にあるのは「塩」や「これ」で、変化しようのない名詞や代名詞なので、特に問題はないわけです。
●見事です、まったくです、たいしたものです
変化しない品詞といえば、形容詞のほかに形容動詞があります。
↑たとえば、
「見事だ」に「です」をつけて、「見事です」と言い換えることができます。
副詞も変化しないので、「まったくだ」に「です」をつけて、「まったくです」としておかしくないでしょう。
連体詞も変化しないので、「たいしたものだ」を「たいしたものです」とすることができます。
念のために言っておくと、
「たいしたものだです」
は日本語として明らかにNGです。
●おいしかったです
でもこれ↑誰もがよくやってしまうミステイクです。
たとえば人に食事を御馳走になるときは、ただ「おいしい」と言うのではなく、「おいしいです」「おいしかったです」と、「です」をつけて丁寧に表現したくなるでしょう。
↑しかしその表現は、文法的にいって不適切であるばかりか、敬語表現としても不適切で、幼稚な印象を与えます。
これからは、
と言うようにしてみませんか。
●思わなかったです
先日、テレビであるタレントがこう言っていました。
それを言うなら「思いませんでした」「思ってもみませんでした」でしょう。
なんていうのも、変な言い回しです。
この違和感を解消するには、
と言い換えると良いですね。
とでも言えば、「言葉遣いがきれいだ」「顔だけじゃなく、頭もいいのね」と視聴者に良い印象を与え、イメージアップになったのに、と他人事ながら残念に思います。
●理由は特にないです
「ないです」という表現は、どうにも据わりが悪くて落ち着きません。
「ないです」ではなく「ありません」とすれば、ぐっとよくなります。
たとえば、「特に理由はないです」と言う代わりに、「特に理由はありません」と言えばいいのです。
それでじゅうぶんに意図は伝わります。
「特に理由はありませんが、ただこの点が云々」というように、説明を加えるうえでも好都合です。
「ない」を使ったほうが効果的、という場合もあります。
というようにすれば、不自然な語感にならず、「こちらの事情を理解してほしい」という気持ちを強く打ち出すこともできます。
●「舌足らずな表現」を「大人の表現」に
「です」をつけていい言葉、つけてはいけない言葉の区別がつくようにしましょう。
日頃から言葉遣いに気を配り、言語感覚を磨いていくことが大切です。
【例 文】危ないですから塀にのぼらないでください。
【改善例】危険ですから塀にのぼらないでください。
【例 文】まだ気づいていないです。
【改善例】まだ気づいていません。
【例 文】彼の判断は間違っていなかったです。
【改善例】彼の判断は間違いではなかったのです。
【改善例】彼がそう判断したのは間違いではありませんでした。
【例 文】できればそうしたかったです。
【改善例】できればそうしたかったのです。
【改善例】できればそうしたいと思いました。
【例 文】そのようにしたいです。
【改善例】そのようにしたいのです。
【改善例】そのようにしたいものです。
【改善例】そのようにしたいと思います。
【例 文】ありがたかったです。
【改善例】ありがたかったのです。
【改善例】ありがたいことでした。
【例 文】わけがわからないです。
【改善例】わけがわからないのです。
【改善例】わけがわかりません。
【例 文】いろんなです。
【改善例】いろいろです。
【例 文】外が騒がしいです。
【改善例】外が騒がしいようです。
【例 文】みなさん、静かにです。
【改善例】みなさん、お静かに願います。
●まとめの一言
何にでも「です」をつければ丁寧な言葉遣いになるわけではないということを、ご理解いただけましたでしょうか。
「です」をつけてよいのは、活用しない(変化しない)品詞、つまり名詞・代名詞・形容動詞・副詞・連体詞のあとです。