文体模写(パスティーシュ)

赤川次郎氏の文体模写「3月は人も猫も成長する月」

投稿日:2018年1月31日 更新日:

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この記事のひとつ手前の記事は、

「三寒四温の乗り切り方」

という内容でした。
前記事→「三寒四温」を乗り切るために、身体を内側から温めよう

私の手によるこの前記事を、もしも有名作家の誰かが読んで手を加えるとしたらどんなふうにするのかな〜〜
という前提で、遊び心の文体模写をしてみたのが本記事です。

前記事と本記事、併せてご笑覧いただけますなら幸いです。

さて、まずは文体模写について少しお話ししたいと思います。

文体模写、つまり他人の文章スタイルを真似て書くことは、筆力向上におおいに役立ちます。

ですからこれは、暮らしに役立つ情報を確認しながら、ついでに言葉力アップグレードをはかるという、一粒で二度おいしい企画なんですね。

年間シリーズ企画としてお届けする予定で、今回はその第15回目、赤川次郎氏バージョンをお届けします。

暮らしに役立つパスティーシュ(文体模写)
第15回・赤川次郎氏バージョン

「三毛猫ホームズ」のあの作家だから、きっとこう書くだろう


「3月は人も猫も成長する月」

それはちょうど、3月末日のことだった。
久しぶりに休みがとれたので、石津刑事は昼すぎまで自宅の部屋でごろごろしていた。
するとそこに、窓の外から猫が「みゃーお」と鳴く声が聞こえた。

「みゃーお、みゃーお」
と鳴き続けるのは、さかりがついたせいだろうか。

それとも、何かを必死に訴えているのだろうか。
その「みゃーお、みゃーお」が次第に「にゃーお、にゃーお」になり、ついには「いゃーお、いゃーお、いやーおぃぃー」と聞こえだした。

しかし、猫が「いやーおぃぃー」なんて鳴くか、ふつう?

「いやおい」と鳴いているようにも聞こえるし、なんだか、人間の言葉のようじゃないか。
と思っていると、そこに石津の妻がやってきた。

「あなた、起きているなら、さっさとご飯を食べて」

「うん、朝昼兼用だな」

「いやぁねえ、いくら休みだからって、昼過ぎまで寝坊するなんて」

「いやおい、その言い方はないだろう」

「え、なにが?」

「だから、たまの休みくらい、ゆっくり寝かせてくれても」

「ええ、ですから文句は言ってませんよ。ふだんしっかり働いてくれているんだから」

「いやおい、だったらもっとやさしい言い方をしてくれよ」

「あなた、いやおい、いやおいって、2度も言ったわよ。偉そうな口ぶりね」

「いや、外で猫が、いやおい、いやおいって鳴くもんだから」

「猫? 猫のせいにするなんて呆れるわ」

「だけどさ、猫が鳴いたのは本当のことなんだ。嘘だと思うなら、見てみろよ」

「あら、ほんとだ。窓の下に一匹、三毛猫がいるわ」

「そいつが、いやおいって何度も鳴いたんだ」

「いやおい? 猫がそんな鳴き方する?」

「人間の言葉をしゃべっているような、変な鳴き方だよな」

「考えすぎよ」

「そういえば、3月のことを昔の人は『いやおい』といっていたんだよなあ」

「あら、そうなの?」

「だってほら、3月というのは実生活の上でも一区切りの時季だから」

「だから何?」

「学校や会社、官庁などでは3月末で年度が終わり、4月1日から新年度が始まるだろ」

「そうだけど」

「卒業式、入学式、転任に伴う歓送迎会など、終わりと始まりのセレモニーが目白押しの季節だ」

「ええ、まあね」

「だから3月のことを弥生(やよい)といい、弥生はイヤオイとも読む」

「ふうん、そうなの。知らなかったわ」

「いやおいとは、ますます成長するという意味を持つ」

「でも、猫にはそんなことわからないでしょ」

「わからなくたっていいんだ。とにかく、椿、れんぎょう、土筆、沈丁花、すみれ、タンポポといった植物が一斉に芽ぶき、人々は新たなステージを迎えてますます成長していく時季だから、3月はいやおいなのだ。猫はそう訴えていたのかもしれないなあ」

と石津刑事が感心して言うと、妻は、
「あなた、とにかくお昼ご飯をさっさと済ませてちょうだい。1日なんて、あっという間に終わってしまうんですからね」
と言った。

「ああ、そうだな。明日から新年度だし、遅刻するわけにはいかないから、早めに飯食って、風呂はいって、寝てしまわないといけないなあ」
と石津刑事は言い、
「つまらない1日の過ごし方だけど、それが、いやおいの心得だよなあ」
とつぶやいた。

そのときまた、窓の外で猫が
「いゃーお、いゃーお、いやーおぃぃー」
と鳴いた。

(つづく)

関連記事→水野敬也氏の文体模写「1年に5つの節句があるって、自分知っとるか〜」

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